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松村比呂美:作     
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第1話

  ――急がなければ夕暮れ時に間に合わなくなる。
 成美は占いの本を握り締めたまま、「橋の見える公園」行きのバスに飛び乗った。
           ***
『今日はあなたにとって特別な日となるでしょう。コツコツ続けてきたことの結果が出るはず。夕暮れ時に、橋が見える場所で、運命の出会いが待っています。赤い表紙の本を持って出かけてみてください』
――ばかばかしい。
奈津子は、胸の中でつぶやいて、占いの本を閉じた。
12星座別に365日の運勢が書かれているものだが、これでは、12人にひとりの割合で運命の出会いをすることになるではないか。
 奈津子は、もともと占いは信じていない。それなのに、この本を手に取ったのは、昨日の会社での出来事が堪えていたからだ。
 コツコツ続けてきたことの答えが出たのは、今日ではなく、昨日だった。
努力を重ねてきた結果があれだというのか。ますます、気持ちがふさいでくる。
 昨夜は悔しくてほとんど眠ることができず、今日は久しぶりに休日を取ったというのに、早朝からベッドを抜け出した。
家にいても気持ちがふさぐだけなので、ぶらぶらと街をさまよい、この書店に入ったのだ。
 橋の見える場所……。
市内に、橋を見るのに絶好のスポットがある。名前も「橋の見える公園」というストレートなものだ。もしかしたら、この地域に住んでいる山羊座の誰かが、この占いを読んで、そこに行くかもしれない。占いの本を読むのはほとんどが女性だろう。書かれていることを鵜呑みにして、のこのこ出かける愚かな女を見に行くのも、うさばらしになるかもしれない。
この占い本の表紙も赤い。持っていくとしたら、この本にするだろうから目印にもなる。
 奈津子は手にした本を棚に戻さず、レジに運んだ。
 運命の出会いなど、そうそうあるものではないと思いながら……。

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